
本記事は、一般社団法人ASIBAのnoteに掲載された記事を、許可を得て転載したものです。
9月27日~30日、BankPark YOKOHAMAで竹中工務店のサーキュラーデザインの取り組みを紹介するイベント『竹中工務店 サーキュラー支店 展』が開催されました。ASIBAレーベルのメンバー・ReLinkは、解体材の新たな使い道を考える展示・ワークショップを実施しました。
これまで異なるアプローチから建材の循環について考え、取り組みを続けてきた竹中工務店とReLink。イベントを通じて見えてきたサーキュラーデザインの新たな可能性や課題について、竹中工務店 長谷川完さん、福井彰一さん、ReLink 本多栄亮さん、ASIBA 二瓶雄太がざっくばらんにお話しします。
目次
- リユースで思い出した「ものづくりの楽しさ」
- サーキュラーデザインの本質は、関係性を変えること
- 最後は建築の力を信じる
リユースで思い出した「ものづくりの楽しさ」
本多さん:
今回の企画では現場から調達した解体材の全く新しい用途を、参加者の皆さんにスケッチしてもらいました。正直、イベント前は大したアイデアは出ないだろうと思っていたんですが、やってみたら本当に想像を超える提案ばかりでした。
二瓶:
僕のお気に入りはこれ、『けっこう高いいちにあるブランコ』です。素材やスケールを全部飛び越えて、純粋に作りたいものを描いている。自由な発想に、思わずはっとさせられましたね。

福井さん:
これを見ると、建材のリユースもあくまで目的ではなく手段であることを思い出させられますね。大切なのは、ものづくりの根源的な楽しさを忘れないこと。技術者やデザイナーとしての好奇心を失えば、新しい価値を生み出すことはできないと思います。
イベントには4日間で約1,000人の方にお越しいただきました。同業でサーキュラーデザインに関わる方から、ふらっと立ち寄った建築に詳しくない方、そして小さなお子さんまで。この取り組みは特定の人だけで深掘りしていくものではないと思っているからこそ、幅広い層の方々に足を運んでいただけたのは嬉しかったですね。



福井さん:
豊富なワークショップのノウハウを持っているASIBA、そして実際の解体材を持っているReLink。お二方に出展をお願いしたことで、誰もが参加しやすく、リアリティのある展示を作ることができたと思います。
ワークショップには、弊社のメンバーにも何名か参加してもらいました。サーキュラーデザインと直接は関わりのないメンバーでしたが、アイデアを出すプロセスを体感し、実際にモノを見て考える難しさを知ってほしいと思ったんです。案の定、ワークショップのあとには「普段使わない頭を使った」とこぼしていました。
二瓶:
ASIBAのワークショップは、スパルタなことで有名なんです(笑)。いつも参加者の頭をフル回転させてしまう。
長谷川さん:
それはいつも思います。毎回、終わるとヘトヘトになるんですよ(笑)。
初めて二瓶さんとお会いしたのは2年前、ちょうどここ『Inspired.Lab』で弊社が開催したイベントでのことでしたね。懇親会の時に「こんにちはー!」と名刺を差し出してきたのを今でも覚えています。「来年からインキュベーションやりたくて、スポンサー探してて……」と言われて、「いや、来年の予算もう決まっちゃってるんだけどな」と(笑)。
それでも、小川町でフィールドワークを開催したり、堀ビルを会場としてお貸ししたり、その時々でできることを探しながら少しずつ関わりを深めてきました。
二瓶:
当時の僕たちは、実績もへったくれもなかったですからね(笑)。それでも本当に真摯に話を聞いてくださったのを覚えています。
そして、いよいよ何か具体的な実証実験やプロジェクト連携に踏み込んでいこうとサーキュラーデザインビルド®️の福井さんを繋いでいただいたのが半年前でした。このイベントを出発点として、今後も多様な形で共創を広げていけたらと考えています。
サーキュラーデザインの本質は、関係性を変えること
福井さん:
同業の方から「再利用材は経済合理性がないのに、どう社内で推進しているのか」と聞かれることがあります。確かに、再利用材を使えば建設費が上がってしまうことは事実です。ただ、私たちが取り組みを始めた頃は1.5〜2倍かかっていたコストは、物にもよりますが今では1.15〜1.2倍程度にまで抑えられるようになっています。2倍では難しくても、15〜20%であれば検討の余地はある。リユースは、リデュースやリサイクルに比べてもCO₂削減効果が大きく、環境価値の高い取り組みです。その価値を丁寧に可視化していくことで、再利用材の活用はさらに広がっていくと考えています。
本多さん:
その環境価値に加え、僕たちがもう一つの切り口として考えているのが地域価値です。今ReLinkは、各地のまちづくりに取り組むプレイヤーの方々と連携しながら、その土地で使われてきた建材のリユースに取り組んでいます。今回の展示でも、建材ごとに元の用途や地域を併記し、素材の背景やストーリーが想像できるようにしました。
かつてその場所で使われていたという文脈を地域の中で引き継ぐことで、希少性や実用性だけでは捉えきれない、新たな建材の価値を見出せるのではないかと考えています。


長谷川さん:
最近では、全国各地でさまざまなプレイヤーがサーキュラーエコノミーの活動を広げていますよね。一方で、業界全体の仕組みを変えるには小さな取り組みが点在するだけではなく、大規模建築の世界も動かさなければならない。つまり、竹中工務店1社だけでなく、業界のすべてのプレイヤーが一緒に取り組む枠組みをつくる必要があります。福井さんは、今まさにその仲間づくりに挑戦してくれている最中なんだと思います。
福井さん:
この5年間の取り組みの中で学んだのは、とにかく途方にくれるまで考え抜くことの大切さです。万策尽きてもう無理だというところまで行き着くと、必ず助けてくれる仲間が現れます。利益を度外視して技術開発に付き合ってくれたのはメーカー、設計事務所、他社のゼネコンなど様々なプレイヤーの皆さんでした。
サーキュラーデザインの本質は、関係性を変えることだと思います。これまでクライアントのニーズや経済的価値を中心に動いてきた建築業界で、ゴミを起点に、何をどう回せるのかをゼロから考える。そこにはもはや、これまでの受注・発注、上流・下流といった関係はありません。フラットな立場で建設産業そのもののあり方を考えていく。そうしたネットワークを広くつなげていくことが、ゼネコンとして竹中工務店にできる役割だと思っています。

最後は建築の力を信じる
本多さん:
建築学生になってすぐ、ある先輩から「街の課題を解決するのって建築じゃなくてソフトのプロジェクトだよね」と言われたのが、ものすごくショックだったんです。それ以来、建築を作ることが街に良い影響を与えるということを示したいとずっと思っています。
ReLinkとしては、集めたリユース材を小さなプロダクトにした方が利益は出やすい。それでも空間という形にこだわっているのは、今でも建築の可能性を諦めたくないと思っているからなんです。

二瓶:
実際、リユースと言われてなかなか実感が湧かない人も、出来上がった部屋を目にすると「いいね」と言ってくれることがあります。空間にするというのは、プロダクトで完結するのとはまったく違う広がりを生む行為なんだと思います。
福井さん:
今回のイベントは、絶対に単発の企画で終わらせてはいけないと思っています。アイデアを形にしていくことで、少しずつ共感してくれるパートナーやクライアントを増やしていきたいですね。
建築という業界の性質上、何かを隠す必要はないと思うんです。だって、業態をひっくり返すような大変革が一気に起こることはありえませんから。だからこそ、小さな取り組みを積み重ね、少しずつ変えていくしかないんです。



長谷川完さん
株式会社竹中工務店技術本部イノベーション推進グループ所属 COT-Lab大手町代表。
大手町ビル6階にあるInspired.Lab内で、オープンイノベーションを推進するために、様々な企業との連携を模索している。1989年から約30年間、技術研究所で様々な仕上げ材料の研究開発に従事。2023年4月より現職。
福井彰一さん
株式会社竹中工務店経営企画室サステナビリティ推進部所属。
同社の提唱する「サーキュラーデザインビルド®」の推進役。このほか、非財務情報開示や社会貢献活動も担当。2003年に入社以降、総務、人事、経理などを経験。2024年より現職。
本多栄亮さん
合同会社ReLink 代表。修士(工学)・明治大学理工学部建築学科助手
2023年、水越永貴・杉野喬生と共にReLinkの活動をスタート。2025年合同会社ReLink創設。建築解体部材をリユースしたデザインの実践と部材回収・流通のスキーム構築に取り組んでいる。また、建材リユースの流通に関する理論的研究と実践検証を行う。
二瓶雄太
一般社団法人ASIBA代表理事。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程在学。
建築の解体を専門とする。理論構築・歴史研究と並行して、解体剤の再利用や解体予定の建物の葬送などに取り組み、研究と実践の往復を心がけている。
2022年度 総務省 異能vation 採択


